就労ビザを申請して結果を待っているけど、2か月経っても入管から連絡なし。
「もしかして不許可になる?」と不安になっている方は多くいらっしゃいます。
「就労ビザの審査は大体1か月くらいと聞いているけど、どうしてなかなか結果が出ないの?」
そんなお問い合わせもよくいただきます。
この記事では、就労ビザの審査期間について実務の目線から解説します。
就労ビザの審査期間 -「目安」と「現実」
出入国在留管理庁では在留資格の審査にかかる日数について、在留審査処理期間を公表しています。
ここで公表されている期間は全国の入管における在留審査の処理期間の平均日数で、在留資格別、申請の種別ごとに審査終了までの日数と処分までの日数が対象となっています。
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」と「特定技能1号」について、令和7年4月許可分の資料で公表された日数は次のとおりとなっています。
「目安」の審査期間
在留資格名 | 認定申請(呼び寄せ) | 更新申請 | 変更申請 |
---|---|---|---|
技人国 | 48.9日 | 22.3日 | 25.7日 |
特定技能1号 | 56.9日 | 29.9日 | 36.0日 |
「現場感覚」の審査期間
これに対し、現場感覚(東京入管の場合)では次のとおりです。
在留資格名 | 認定申請(呼び寄せ) | 更新申請 | 変更申請 |
---|---|---|---|
技人国 | 2~3か月 | 1~2か月 | 1~2か月 |
特定技能1号 | 2~3か月 | 2週間~1か月 | 1~2か月 |
「目安」はあくまで目安
上記2つの表は入管の公表する資料と、当事務所で扱った案件の平均的な審査期間(東京入管に限る)を対比したものですが、「目安」と「現実」にはだいぶ違いがあることがお分かりいただけるかと思います。
ただ、入管の公表しているデータは全国平均とのことですし、申請先の入管や申請の内容によっても審査期間は異なりますので一概に比較できるものではありませんが、東京入管(品川)では全国平均値と比べてもかなり審査に時間がかかっている(反対に、びっくりするほど早く審査が完了する地方の入管もあります)のは事実です。
審査が長期化する理由
在留資格の審査は個別具体的なものであり、他の人と「まったく同じ内容の申請」ということはありませんので、例え同じような内容の申請であったとしても、審査期間も同じになるということはありません。
当事務所のご依頼者様からも「同じ会社の同僚は〇ヵ月で結果が出たのに、なぜ自分はまだ入管から連絡がないのか」といったようなお問い合わせをいただきますが、上記のとおり、「審査は個別具体的に行われるものであるため、必ずしも他の方と同じペースで審査が進むことはないから」と回答しています。
しかしながら、審査期間が長くなるにつれてご不安になる気持ちも十分に理解ができます。
それでは、なぜ審査が長期化することがあるのでしょうか。
通常、考えられる理由は次のとおりです。
1) 入管が混雑している
シンプルに入管の審査件数が多いため、審査開始(自分の順番が回ってくる)までに時間がかかるケースです。
在留審査処理期間の資料中でも「例年、4月の就職時期に向けて審査が増加するため、就労資格について、審査期間が長期する傾向にあります。」と記載がありますように、審査の待期期間が長く、結果的に全体の審査期間が長期化することがあります。
2) 慎重に審査をするべき事項がある
在留資格ごとに定められた要件やガイドラインの項目を満たしているかについて、提出された資料から判然としないため、判断に時間がかかっていると審査が長期化することがあります。
このような場合、入管は必要に応じて関連機関に照会をかけたり、ごくまれに申請人や所属機関に電話で事実確認をするということもあります。
また、初めて外国人を雇用する企業や、スタートアップの企業などでは事業活動の安定性や継続性を判断するため、所属機関としての適合性に関する審査にも時間を要することとなります。
3) 追加資料の提出をする必要がある
上記(2)に該当する場合に、入管から「資料提出通知」という書類が送られてくることがあります。
資料提出通知の内容は、審査を継続するうえで必要な追完資料の提出を指示するものや、当初提出した資料の内容に関して、より詳細な説明を求めるものがありますが、この通知に対する準備や回答に要する期間と、提出後の再審査にかかる期間分、審査が伸びることになります。
また、資料提出通知は一回のみであることがほとんどですが、審査官によっては複数回の資料提出を求めてくるケースもあり、そのような場合にはかなり審査が長期化してしまいます。

4) 不許可後の再申請の場合
不許可後の再申請の場合にも、上記(2)と関連して、審査に時間がかかるケースが少なくありません。
審査官は、当初の不許可理由が改善されているかについて、再度提出された資料や説明から判断することになりますが、やはり、一度は不許可処分としている以上、その結果を覆す判断については慎重にならざるを得ないのも理解はできます。
ただし、不許可の理由が比較的軽微なものであり、再申請の提出資料から明らかに要件に該当すると認められる場合や、申請人の置かれた状況等から、早期に審査完了となることもあります。
審査状況の問い合わせについて
申請中に審査の状況を問い合わせることは可能ですが、審査の進み具合について明確な回答を得ることはできません。
申請先の入管や担当者によっても対応が異なることはあり得ますが、基本的に全国どこの入管でも同じ運用となっています。
具体的な見通しについては教えてもらえない
審査の状況を確認する方法は3つあります。
- 申請先の入管に行って、就労審査部門の窓口で聞く。
- 申請先の入管(就労審査部門)に電話で聞く。
- オンライン申請の場合は、在留申請オンラインシステム上のステータスを確認する。
入管の窓口や電話で確認する場合は、申請時に交付された申請受付票に記載の「申請日・申請受付番号・申請人氏名」を担当者に伝えると審査の状況を回答してもらうことができます。
ただし、回答を求めても、ほとんどの場合「まだ審査中です」としか教えてもらうことはできず、例えば「あとどれくらいで審査が完了するか」といった具体的な日数などについては、まず回答してもらえません(審査が最終段階まで来ているようなケースでは、担当者によってはその旨教えてくれる場合もあります)。
早期審査完了の要望書を提出してみる
審査が長期化する主な理由について上記でいくつかご説明をしましたが、単純に入管の審査が立て込んでいて、審査が進んでいないと思われるケースや、申請人の特例期間の期限が間近に迫っているような場合には、入管に対して、審査を進めてもらうための要望書を提出することもあります。
要望書はあくまでただのお願いであって、入管側もこれに従う義務はありませんので、その効果については保証されるものではありませんが、審査の長期化が申請人の今後の在留状況に影響するような場合には提出してみても良いかもしれません。
特例期間とは、在留カードを所持している方(※例外あり)が「在留期間更新許可申請」または「在留資格変更許可申請」を行った場合において、その結果が出るまでの間は在留期限を過ぎても適法に在留することができる期間のことで、具体的には「在留期間満了の日から二月が経過する日が終了する時」とされています。
よくあるご質問
- 審査が長引いていますが、不許可の可能性が高いということでしょうか。
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すでに解説したように審査が長引く理由は様々ですから、一概に審査期間の長さのみをもって不許可の可能性が高いとは言い切れません。
しかしながら、通常から考えて異常なほど(例えば、就労ビザの申請で半年やそれ以上結果が出ないとき)審査が長期化し、その間に資料提出通知もない場合について、不許可になる事例も散見されます。 - 追加資料の提出通知が届きましたが、入管の指定する提出期限に間に合いそうもありません。この場合は全部準備が出来てから提出すれば良いですよね?
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資料提出通知に記載の提出期限は厳守してください。時々、設定された期限が現実的に考えて短すぎる場合もあり、また何らかの事情ですぐに対応できない場合などもあるかと思いますが、そのようなときにはすぐに入管に電話をして、期限を延ばしてもらうように交渉してください。
ごくまれに提出期限の延長は認めないとされる場合もありますが、基本的には数日間の猶予をもらえることがほとんどです。
無断で提出期限を超えて提出をしたりするようなことは避けてください。なお、追加資料を提出しない場合、基本的に不許可処分となります。 - 追加資料の提出通知が届いたということは、不許可になる可能性が高いということでしょうか。
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場合にもよりますが、「許可まであと一歩」の状態と考えることもできます。
資料提出通知の内容は、入管が審査を進めるために必要と判断するものについてその提出を求めるものですが、反対に考えると、入管の求める資料及び回答の提出をすることができれば、それは審査においてプラスに働きます。 - 申請中に特例期間が満了してしまいそうです。審査が完了しないのは入管の都合なので、そのままにしておいても大丈夫ですか?
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いかなる事情があろうとも、そのような場合には、特例期間の満了前に必ず入管に問い合わせをしてください。
- 就労ビザの更新申請中は働くことはできますか?
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審査中であっても在留資格は継続していますので、就労活動を続けていただいて問題ありません。
また、審査中に在留カード券面の在留期限が過ぎてしまったとしても特例期間中である限りにおいては就労活動を続けることも問題ありません。
なお、就労活動が認められていない在留資格から就労ビザへの変更許可申請をしている場合においては、その結果が出る(就労ビザの取得)までの間に就労活動を行ってはならないのは当然です。
まとめ
就労ビザの審査は、公表されている標準処理期間内に必ず終わるといったものではなく、入管の混雑状況や申請内容の複雑さ、追加資料の有無などによって大きく変動します。特に東京入管など全体の審査件数が極めて多い入管では、標準処理期間を大きく超えた審査期間になるケースも少なくありません。
しかしながら、審査が長期化する理由は様々ですから、審査が長引いても、それをただちに不許可のサインとは考えず、落ち着いて状況を見守ることが大切です。
とはいえ、通常考えられる審査期間を大幅に超えているようなケースや、特例期間の満了日が迫っている場合などには、必要に応じて状況確認(実質的には入管への催促)や要望書の提出といった対処が有効的なこともあります。
不安なときは一人で悩まず、専門家にご相談ください。