【技術・人文知識・国際業務】在留期間はこう決まる|審査要領に基づく「5年・3年・1年・3月」の判断基準

【技人国】在留期間はこう決まる 審査要領に基づく判断基準

技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」)の在留期間はどのように決められているんだろう?
と気になっている方はとても多いと思います。

事実、当事務所でも、

「許可がおりたのは良いけれど、なぜ1年になのか?」
「最初から5年になるとは思わなかった。なんで?」
「同じ会社の同期なのに、なんで在留期間が違うの?」

といったお問い合わせをよくいただきます。

実は、在留期間の決定は入管の内部資料である「入国・在留審査要領」 に基づき、
明確な基準に従って判断されています。

この記事では、「入国・在留審査要領」 に示されている在留期間の決まり方について整理をし、
その内容について、分かりやすく解説します。

目次

【技人国】在留期間は「5年・3年・1年・3月」の4種類

技人国の在留期間は、次の4つから決定されます。

  • 5年
  • 3年
  • 1年
  • 3月

これらの期間につき、審査要領では、各期間が付与される条件について
次のように区分しています。

◆ 5年の付与条件

条件1:次の①~③に該当すること(②は該当者のみ)
条件2:かつ、④または⑤に該当すること

内容
外国人本人が入管法上の各種届出を適正に行っていること(住居地の届出・住居地の変更届出・在留カード記載事項変更届出・所属機関の届出など)
学齢期の子どもがいる親については、その子どもが小学校・中学校または義務教育学校に通学していること
就労予定期間が3年を超えるもの
勤務する会社について、カテゴリー1またはカテゴリー2であること
④に該当しない場合、現在の技人国の在留期間について3年または5年のカードを持っていて、かつ、技人国としての活動を5年以上継続していること。

◆ 3年の付与条件

次の3パターンのいずれかに該当するもの

内容
上記「5年」の要件を満たしているが、就労予定期間が1年を超え3年以内
すでに「5年」の在留期間であったが、更新の際に届出義務の要件を満たしていない
かつ、就労予定期間が1年を超えるもの
5年、1年または3月のいずれの条件にも該当しないもの

◆ 1年の付与条件

次の4パターンのいずれかに該当するもの

内容
勤務する会社がカテゴリー4に該当
「3年」または「1年」の在留期間であったが、更新の際に届出義務の要件を満たしていない
職務上の地位、申請人の活動実績、会社の活動実績等から、1年に1度、在留状況を確認する必要があるもの
就労予定期間が1年以下であるもの(契約期間の更新が見込まれるものを除く)

◆ 3月の付与条件

就労予定期間が3か月以下であるもの

在留期間は「活動の安定性」と「届出義務の履行」で決まる

審査要領で示されている在留期間の区分を見ていくと、入管が何を重視しているのかが分かります。
結論から言えば、在留期間の長さは “在留活動の安定性”に比例して決定されていることがわかります。

入管が評価しているポイントは大きく次の3つです。

外国人本人の「届出義務の履行」と「生活基盤の安定性」

「5年」と「3年」の要件に、”外国人本人が入管法上の各種届出を適正に行っていること“があります。
この届出とは例えば、住所や勤務先などに変更があったときに入管に対して提出しなければならない届出(多くは14日以内)のことで、これらの届出を怠ると、その後の更新手続きなどの際に決定される在留期間に影響が出てくる可能性があります。

とくに、勤務している会社を退職したときや、その後、新しい会社に入社した際には「契約機関に関する届出」という届出をそれぞれの日から14日以内に行わなければなりませんが、この手続きをしてない方も多いかと思います。

これらの届出を適切に行っていることは、入管からの信用につながり、長期在留のポイントにもなるほか、近頃では永住許可申請にも影響してきますので、必ず忘れずに手続きをするようにしましょう。

その他、義務教育の学校に通っている子どもがいる場合は、生活基盤の安定性の観点から、長期の在留期間が決定される傾向にあります。

所属機関(勤務先)の「規模・信用力」

所属機関のカテゴリー分類は、勤務先を

  • 上場企業等(カテゴリー1)
  • 一定額以上の源泉徴収税額がある企業(カテゴリー2)
  • カテゴリー1、2に該当しない企業(カテゴリー3)
  • 新設会社等(カテゴリー4)

に区分する仕組みです。

これらのうち、カテゴリー1・2は、規模や納税実績などから安定性が高いと評価され、提出書類が簡素化される優遇措置があるほか、在留期間の審査では「5年」または「3年」を付与する条件の一つに明記されており、長期の在留期間が認められやすい傾向があります。

カテゴリー概要在留期間への影響
カテゴリー1上場企業・独立行政法人・地方公共団体など、社会的信用が高い機関企業の安定性が高く評価され、3年・5年の在留期間が選ばれやすい
カテゴリー2前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」で一定額(現在は1,000万円)以上の源泉徴収税額がある企業一定以上の規模であるため、信用力が高いと判断され、長めの在留期間が付与されやすい
カテゴリー31・2に該当しない既存の一般企業在留期間は状況に応じて判断されるが、1年・3年など中間的な期間となりやすい
カテゴリー4設立間もない企業や新規事業など安定性の評価が難しいため、1年など短期になりやすい傾向

雇用契約の「継続性」

雇用契約が「期間の定めのない正社員」である場合は、長期的な雇用が見込まれるため、在留期間の判断でプラスに働く傾向があります。

一方で、1年ごとの契約社員として雇用されているケースや、正社員であっても試用期間が過度に長い場合、また入社直後に技術・人文知識・国際業務では認められない実務研修(現業作業を含む)を一定期間行う場合などは、雇用の安定性が十分に確認できないと判断され、在留期間が短め(1年など)となることが多くあります。

判断ポイント内容在留期間への影響
期間の定めのない雇用(正社員)長期的な雇用継続が見込まれる。活動の安定性が高い。5年・3年など長期の在留期間の決定にプラス材料
1年単位などの有期契約(契約社員)雇用が年ごとに更新されるため、継続性が不確実と判断されやすい。更新回数が少ないうちは短めの在留期間になる傾向
試用期間が必要以上に長いケース活動の安定性が評価できない。短めの在留期間になる傾向
実務研修として現業作業を行うケース技人国で認められない業務に一定期間従事するため、適正な活動が確認しにくい。短めの在留期間になる傾向

「年に1度、在留状況を確認する必要がある」と判断されるケースについて

届出義務の履行状況や、勤務先のカテゴリー、雇用契約の期間など、通常であれば3年・5年の在留期間が付与されるための要件を満たしている場合であっても、会社の経営状況や申請人が担当する業務の安定性が十分に確認できないと判断されることがあります。

このようなケースでは、入管は「活動状況を年に一度確認する必要がある」として、まずは 1年の在留期間を付与する運用 となります。

例えば、よくあるケースでは、申請人の職務内容が専門業務と現業作業の境界に近く、適正性の判断に慎重を要する場合などが該当します。

ただし、この場合であっても、
次回の更新で活動内容・会社の状況が安定していると確認されれば、3年・5年への移行が十分見込めます。

まとめ:長期在留を得るためには“安定性”を積み上げることが重要

いかがでしたでしょうか。今回は、入管の審査要領に従って、技術・人文知識・国際業務の在留期間がどのように決められているのか、その考え方と評価ポイントをまとめてみました。

在留期間の長短は、一見すると「なぜこの年数なのか?」と感じられることが多いものですが、実際には 本人の届出義務の履行状況、企業側の信用力、そして雇用契約の継続性 という明確な基準に基づいて判断されています。

長期の在留期間(3年・5年)を得るためには、必要な届出を確実に行うこと、勤務先の体制が適切に整えられていること、そして安定した雇用関係が築かれていることが欠かせません。

これらは一度に整うものではありませんが、外国人本人と企業が協力して環境を整えていくことで、次回更新ではより長期の在留期間を目指すことが可能です。

在留期間決定のルールは見えづらいものですが、「運」で決まるものではなく、安定した活動を積み上げてきたかどうかの総合評価です。制度を正しく理解して備えておくことが、安心して日本で生活・就労を続けるための大切なステップとなります。

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